Sep 21

保育の仕事

保育士を目指したきっかけ

『あなたは、おおきくなったら何になりたいですか?』

子どもの頃によく聞かれる質問ですが、小さい頃の私は「ようちえんのせんせいになりたいです」と答えていました。
大人になった今、私は保育士です。
『保育士・保育の仕事は天職』だと思っています。

どのようなきっかけで、私は保育士を目指すようになったのか、まとめてみたいと思います。

●1章●『ようちえんのせんせいになりたい』

◎私の原点・幼稚園の先生への憧れ

私は、幼少期から「人見知り」「場所見知り」が激しく、新しい環境に馴染むまでとても時間がかかる子どもでした。
最初の一歩を踏み出すまで、とてつもない時間を要します。

しかし、多くの時間がかかっても一歩踏み出すことができれば、二歩目・三歩目・・・その先は、周りの人が驚くほど、軽やかに歩み出すことができるようなタイプの子どもでした。

もちろん様々な環境により、馴染むまでの時間は異なりますが、「最初の一歩」を踏み出すまでには、とてつもなく大きなパワーが必要になります。

本質は変わることはないと思いますが、成長とともに、多くの経験・体験を通して、自分の中にたくさんの引き出しができます。
様々な環境や状況に対応するために、自分の中にある引き出しからいろいろなことを試すことができます。
そのため、大人になるにつれ、「何とかなる」ことも多くなりましたが、小さな頃の自分にとっては、なかなか難しく、多くの「新しいこと」に緊張感を抱いていたような気がします。

そのようなタイプの私が、初めての集団生活の場として経験することになるのが、幼稚園でした。
さすがに、年少組さんからの3年保育は私にはハードルが高かったようで、両親は2年保育の年中組さんからの入園を選択しました。

とはいえ、もちろんというか案の定、私の人見知り&場所見知りは、フルパワーで発動します。

しかし、自分の記憶として、「幼稚園がいやだった」というしこりは全くありません。
何故かと考えてみると、私の中で幼稚園の頃の記憶として強く残っていることは、「先生の優しさ」です。
なかなか一歩踏み出すことができない私を、いつも気にかけてくださり、優しく声をかけてくださいました。
毎日毎日、とても丁寧に接してくださったおかげで、幼稚園が嫌な場所になることなく、
「とても楽しい場所」になり、今でもとても良い思い出として残っているのだと思います。

幼稚園の先生の優しさとともに、記憶の中に残っていることは、「ともだちの優しさ」です。
自分が保育士としての新入園児との関わり方から推測してみると、私とクラスのともだちが良い関係性で関われるよう、先生がかなりサポートしてくれていたのではないかと思っています。

「たくさんの人に助けてもらった」

自分の中にある幼稚園の頃の記憶として、この言葉に尽きます。
多くの「人」に恵まれ、助けてもらい、支えてもらいました。

良い先生と出会い、私の中で幼稚園の先生は「憧れの存在」になりました。

「せんせいみたいになりたい」

幼い自分の中で、将来の夢として目指す存在になりました。

小学校にあがってからは、小さな子どもたちと遊ぶ機会が多くあったことから、『将来は「子どもと関わる仕事をしたい」』と思うようになります。
創意工夫しての工作や造形活動が大好きだったこともあり、そのようなことも生かせるのではないかと考えました。

私は、幼稚園出身でしたので、「子どもと関わる仕事をしたい」という思いは、自然な流れで「幼稚園の先生」へとつながりました。

この時点では保育園という場所は理解しつつも、「保育士」という存在についてはまだあまりよく分かっていない状態です。
しかし、あることをきっかけに「保育士」という存在を初めてきちんと知ることになります。

◎乳児院という存在を初めて知った日

乳児院とは、「保護者の養育を受けることができない乳幼児を養育する施設」です。

私がこの乳児院という存在を知ったのは、小学校の高学年の頃でした。
正確には、「乳児院」という名称をきちんと理解するのはもう少し後になります。
当時は、このような場所があることに大きな衝撃を受け、名称まではきちんと自分の中に記憶されていなかったのかもしれません。
(後々、いろいろなことを勉強する中で、「あれは乳児院という施設のことだったのだ」と理解することになります。)

乳児院を知ったのは、テレビの特集として、ある地域の乳児院に長期密着する形のドキュメンタリー番組でした。
偶然にも同じ頃に、乳児院に関係した番組を2本続けて見る機会がありました。
その内の1本は割と長編の内容だったように記憶しています。

様々な事情があるお子さんがいる場所ですので、モザイクが多くかかっていましたが、その中で、ある一人の保育士さんは顔を出して出演されていました。
その保育士さんをメインに密着し、乳児院の日々の様子を記録しているような番組でした。

保育士さんには担当しているお子さんがいらして、そのお子さんとの関わりを多く映し出していました。
おそらく小規模な乳児院だったと思いますが、保育士さんとお子さんとの関係性は、一見すると親子のようで、子どもながらに「この人とずっと一緒に暮らせば良いのに」と楽観的に感じていた記憶があります。

このドキュメンタリー番組のラストは、私の中にとても強いインパクトを残します。

ラストは、保育士さんが担当していたお子さんが養子として新しい家族とともに、乳児院を退院する場面でした。
お子さんと新しい家族の方は、長い時間をかけて様々なプログラムを経て、多くの関わりをもっており、お子さんもすんなりと抱っこされていました。
しかし、周りをキョロキョロしながら何かを探すような素振りをし始めると、次第にぐずりはじめました。

「大好きな保育士さんを探しているのだろうな」

それは小学生の私でも理解できました。
生まれて間もない頃から乳児院で育ち、保育士さんを親のように感じていていたであろうお子さんにとっては、すぐには全てのことを理解できない状況だったのではないかと思います。
とても悲しく、苦しく感じたのを覚えています。

実は担当の保育士さんは、乳児院内にはいるのですが、一切顔を見せることも、お別れの挨拶もすることなく、ただただじっとお子さんと新しい家族を見つめています。
そして、この際に保育士さんがおっしゃった言葉は、今でも私の心の中に残っており、自身の保育士としての「土台」になっています。

「保育士は子どもの幸せを常に願っています」
「保育士は子どもを幸せへと導く存在なのです」

このような言葉を保育士さんがお話しされていて、「今、〇〇ちゃんに最後のお別れをすること、会うことはマイナスになってしまう」というようなことをスタッフの方に伝えていました。
新しい家族とともに新しい生活を始めるお子さんの「幸せ」のため、会わないことを選択した保育士さんの姿はとても印象に残っています。

私はこの瞬間、「多くの子どもたちを幸せへと導くような存在になりたい」という将来的に目指したい方向性がみえたように思います。
そして、乳児院という場所にも大きな興味をもちました。
乳児院という存在を初めて知った日、私にとって「保育士」という職業はとても大きなものになりました。

保育士と幼稚園教諭、どちらも同じようにみえる職業ですが、様々な部分で異なります。
どちらが良いとか悪いとかはありません。
それぞれに担うべき大きな役割がありますが、「大事な乳幼児期に深く関わる仕事」であることは同じです。

自分が目指したいものを叶えるためにはどのような道を歩んだら良いのか、どのような職業を選択したら良いのか、学年があがるにつれて迫られる進路の方向性として、何度も何度も悩みのツボにはまりました。

●2章●はじめての保育園でのアルバイト

◎「私は向いているのだろうか…」

多くの時間を費やし、私が見出したこたえは、「保育士と幼稚園教諭という方向性は変えずに幅広く様々なことを学べる学部に進学すること」でした。

保育士は専門職ですが、その専門分野だけでなく、幅広く様々な分野を学ぶことができたことは、自分にとって大変プラスだったと今改めて強く感じています。

さて、新しい環境へと進んだ私は、入学して間もない頃に、ご縁をいただき、近くの保育園でアルバイトをさせていただくことになりました。

授業等が忙しかった為、アルバイトで入れる日数は少なかったのですが、夕方以降の延長保育の時間や土曜日のイレギュラーな保育日等の保育士補助という形で入らせていただいていました。
大変充実した日々で、自分の中で「保育士」というものが、今まで以上に大きな存在になっていました。

ただ、今改めて思い返してみると、「新しい環境」がいくつも重なり、自分が感じていた以上に心が疲れていたのかもしれません。

保育園という場所は、新入園で入園する園児さんは「半年から1年くらいは、保育園の常在菌のようなものとの闘いになる」と言われています。
全員が全員必ずそうなるわけではありませんが、風邪や感染症等々あらゆる病気をもらい、欠席や緊急的な早退が多くなり、継続的に通園することが難しくなります。
「保育園の新入園児への洗礼」とでもいうのでしょうか、保護者の方は、お子さんの体調管理とともに、お仕事の調整に大変苦労されます。
しかし、時間の経過とともに、ウソのようにお子さんの体が強く丈夫になり、欠席の回数が次第に少なくなっていきます。

実はこの洗礼、子どもだけでなく、大人も同じなのです。

この「保育園の洗礼」を知っていた私は、アルバイトを始めてしばらくは体調的にも特に問題なく、「自分は大丈夫なのかな」と思っていました。
しかし、時間差攻撃のような形で、もれなく私もこの洗礼を受けることになりました。

軽い風邪から始まり、胃腸炎や感染症等々、園児さんの中で流行りだすともれなくうつってしまい、アルバイトもなかなか出勤できず、学校生活にも支障が出てしまうようなこともありました。

もともと体が強いほうではなかったこともあり、症状がひどくなってしまうことや長引いてしまうことも多く、声が全く出なくなってしまったこともありました。

立て続けの病気は、人の心を弱くするのかもしれません。

「こんなに体調を崩してばかりで、本当に保育園や幼稚園で働くことができるのだろうか」
「そもそも私は保育者や教育者として向いているのだろうか」

ネガティブな思考は、一度スイッチが入って進みだしてしまうとなかなか止まることができません。
保育園でのアルバイトは本当に楽しく勉強になることばかりでしたが、出勤するとまた体調を崩してしまうのではないか…?と考えてしまうことも多くなりました。

ちょうどその頃、保育・幼児教育の分野とは別の分野にも興味を持ちはじめており(今も少しずつですが勉強しながら楽しんでいます)、気持ち的にもそちらの方にだいぶ傾いていたように思います。

保育・幼児教育の分野から離れることを一番考え、悩んでいた時期だったかもしれません。

しかし、完全にネガティブな思考にはまってしまっていた私を、沼から引き上げてくださった人がいます。

◎保育の基礎を教えてくれた人との出会い

保育園のアルバイトでは、ある一人の先輩保育士さんに大変かわいがっていただきました。
出勤のたびに、「保育士としての基礎」をしっかりと、とても分かりやすく丁寧に教えてくださいました。
おむつ替えの仕方や、子どもへの声掛け等々、細かいこともいろいろと教えていただきました。
時には、絵本の読み聞かせや手あそびを子どもたちの前で披露する時間もつくってくださり、終わった後にアドバイスをくださったりと、本当にさまざまな面でお世話になり、良くしていただきました。
私が今も大変尊敬している保育士さんです。

そんな中、いつものようにお仕事をし、先輩保育士さんともいつものようにいろいろなやり取りをする中で、私の仕事ぶりをとても褒めてくださいました。

いえいえ、そんな…という気持ちをもちつつも、やはり褒められることはとても嬉しいことです。
ましてや、自分が尊敬している先輩保育士さんにお褒めの言葉をいただくことは大変光栄なことです。

そして、ふと話のテンポが変わり、

「先生は、保育士にとても向いていると思う」
(アルバイトの身ですが、保育園内にいる人は皆、「先生」と呼ばれます)

続けて、「やってみて、だめだったらやめれば良いだけ」と言われました。

周りの人からすれば、本当に何気ない一言かもしれませんし、ただのお世辞だよ…という人もいるかもしれません。
でも、「向いている」という言葉は、私にとってとても重く、心に響くものでした。

そして、安易に「やめれば良い」といっているのではなく、「あまり気負いすぎないで」ということを伝えて下さったのだと思います。

先輩保育士さんは、もともとさばさばさっぱりした感じの方なので、このことに対して新たに何かを言うでもなく、特別なアドバイスをするでもなく、本当に何気ない会話の中での言葉です。

だからこそ、より強く、真っすぐに私の心に響いたのかもしれません。

保育士は、子どもへの関わりはもちろんのこと、周りの保育士さんや、保護者の方への関りも大変重要です。
相手の気持ちに寄り添って対応することがとても大事だということを、身をもって感じた瞬間でもあります。

先輩保育士さんにかけていただいた言葉で、私は「保育士」という道に進むこと、保育士として多くの子どもたちと関わっていくことを決めたといっても過言ではありません。

そして、今私は『保育士』です。

私が保育士を目指したきっかけはひとつではありません。
様々な環境や状況の中で、多くのポイントがあるように思います。
その中で、ほぼ全てに共通していることは、「人」との関わりやつながりがあることです。

私は、「人」との出会いに恵まれていたように思います。
もちろん良い人ばかりではありませんし、悲しい思いもしましたが、「人」とのつながりの大切さを強く感じています。

幼稚園の先生への憧れからうまれた「ようちえんのせんせいになりたい」という子どもの頃の夢。
そこから動き出した、「子どもと関わる仕事がしたい」という将来の希望は、今、『保育士』という形で叶いました。
でも、保育士になって終わりではなく、まだまだ学びたいこと・チャレンジしたいこと、たくさんあります。

子どもたちの幸せを常に願いながら、多くの子どもたちを幸せへと導くために、今の自分にできることを、小さな歩みでも一歩ずつ進めていきたいと思っています。

真鍋さんより

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